登記簿謄本には有効期限があるの? 登記の専門家が解説!

2018/09/18
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最終更新 2024/09/20

登記簿謄本には有効期限があるの?

法人(会社も)の登記簿謄本や不動産の登記簿謄本(※1)
(登記事項証明書、履歴事項証明書などのことをいいます。)、
「発行から3か月以内のもの」を提出してください
なんていうことを役所や銀行などで言われた経験はありませんか?

※1 登記制度には後見登記簿などもありますが、今回は、法人登記簿と不動産登記簿を前提にして解説しています。

 

法人登記簿謄本の見本

 

不動産登記簿謄本の見本

 

 

 

 

登記簿謄本に有効期限の真相

 

仕事柄、「登記簿謄本の有効期限って、何か月なのですか?」
という質問を受けることがしばしばあります。

その質問を受けたときは、
「提出先に指示された期限内のものを準備してください。」
とご案内しています。

結論としては、
登記簿謄本それ自体に、有効期限というものはありません!
提出を求める側が「10年前のものでも構わない」ということであれば、それで構いません。

 

 

そもそも登記制度とは?

 

それは、どうしてなのか?
そもそも登記制度とは、大雑把に説明すると、
不動産取引や商取引などの安全を図ることを目的として、
「事実関係」や「権利関係」などの情報の一部を一般に公開するための制度です。

☆その公開された情報の内どの部分をいかなる目的で利用するのかは、
その利用者の自由だからです。

(もっとも、10年前のものでも構わないという場合は、実際には少ないと思いますが。)

 

 

求められることが多い有効期限

 

登記簿謄本自体に有効期限はない、と説明しました。

しかし、実際には、登記簿謄本の提出を求められる場合には、
一定の期限内のものでなければならないときがほとんどです。

そしてそれは、「発行日から3か月以内のもの」が多いように思います。

時折、「発行日から6か月以内のもの」や「発行日から1か月以内のもの」という場合もありますが。

ですので、登記簿謄本の提出を求められた場合は、
相手方が有効期限について説明しなくても、
一応、有効期限があるか否かを確認なさることをお勧めします。
(二度手間にならないように。)

 

 

どうして有効期限を設けるのか?

 

どうして有効期限を設けるのでしょうか?

それは、先ほど説明した登記制度の仕組みと目的にあります。

そもそも登記制度とは、大雑把に説明すると、
不動産取引や商取引などの安全を図ることを目的として、
「事実関係」や「権利関係」などの情報の一部を一般に公開するための制度です。

☆事実関係や権利関係などは、月日の経過によって変わります。

例えば、所有者が死んで相続が発生したり、社長が解任されて交代したり、などです。

どの時点の情報を必要とするのかにもよりますが、
通常、これから不動産を買おうとしたり、これから商取引をしたりする場合は、
少なくとも現在の事実関係や権利関係を先に把握しなければなりません。

その不動産を買おうとするのであれば、
現在の所有者からしか買うことができませんから、
現在の所有者を確認しなければなりません。
(過去に所有者だったとしても、
その所有者が他人に売却して、
現在はその他人が所有者として登記されていることがあります。)

その会社と新たに契約して取引を始めようとするのであれば、
そもそもその会社が存在しなければ契約をすることができませんから、
現在、その会社が存在するのか確認しなければなりません。
(過去に存在した会社でも、現在は倒産して、法律上存在しなくなっていることがあります。)

 

☆権利や権限を持っていない人と話をすると、
時間の無駄になるだけでなく、
それが詐欺だったり、
無用なトラブルに巻き込まれたり
するおそれがありますから、気を付けましょう。
(でもこれ、実は、一般のかたにとっては意外と難しいことなんです。)

 

 

登記簿謄本の提出を求められる具体例

 

登記簿謄本の提出を求められる場合としては、
次のような場合があります。
(なお、これらに限られる訳ではありません。)

 

各種の行政手続をするとき

行政手続をするときに提出を求められる登記簿謄本の有効期限は、
ほぼ例外なく、法律や条例などに「○か月以内のものを提出せよ」
といった趣旨の定めが記されています。

 

裁判所の手続をするとき

裁判所で手続をするときに提出を求められる登記簿謄本は、
3か月以内とされています。

 

金融機関への融資などの申込みをするとき

金融機関で手続をするときも、
各金融機関が「○か月以内のものを提出させよ」といったようにルールを決めており、
そのルールに従って提出を求めています。

 

新規の取引先との間で契約をするとき

新規の取引先との間で契約をするときも、
相手方の企業が「○か月以内のものを提出させよ」
といったようにルールを決めており、
そのルールに従って提出を求めている場合もありますし、
その都度、現場レベルで案件に応じて提出を求めている
という場合もあるでしょう。

 

 

 

問題です

 

あなたが誰かから登記簿謄本の提出を求められた場合、
原本の提出が必要でしょうか?
それともコピーで足りると思いますか?

(ヒントと答えは、下へ スクロールしてください。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ヒント)

問とは逆に、あなたが誰かに対して登記簿謄本の提出を求める場合、
原本の提出を求めますか?それともコピーの提出だけで済ませますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(答え)

有効期限と同じような考え方です。

☆登記簿謄本を提出させて、それを確認する目的を
ちゃんと達成できるかどうかによって変わります。

コピーの提出では不安だということであれば、原本の提出を求めます。

逆に、コピーが確認できれば特に問題ないということであれば、
コピーのみの提出を求めても構いません。

一旦原本を提出させて、自分でコピーをとってから返却する、
という方法もあり得ますね。

それを決めるのは、提出を求める側なのです。

ここまでの説明だと、「じゃ、コピーでも良いかな!」
なんて思われたかた、いらっしゃいますよね?

 

 

本当にコピーで良いのか!?

 

☆コピーを提出させた場合の最大の問題点は、
偽造や変造の危険が増すことです。

コピー機を利用して偽造文書や変造文書を作ることは、
コピー機の精度が上がり、
コンピュータによる画像加工技術が進歩したことなどによって、
素人でも簡単にできるようになってしまいました。

登記簿謄本の原本の偽造や変造ですら、
高性能の機器類や高度な技術を持っている人が行えば、
それを見破るのは容易ではありません。

☆偽造や変造がされた登記簿謄本を確認しても、
内容が事実と異なっていれば、確認した意味がありませんよね。

登記簿謄本は、1通あたり数百円で取得することができますから、
原則的には、原本を提出してもらうべきでしょう。
(事情によっては、自ら登記簿謄本を取得して、
原本を取得して確認すべきです。)

一旦原本を提出させて、自分でコピーをとってから返却するという方法の場合、
原本が偽造・変造されていた場合に、
原本が手元に保管されないため、後日の検証が難しくなりますからね。

 

証明書などの原本を提示させれば十分か?


2024/09/20追記

2020年には一般的には普及していなかった 生成AI が
2024年9月現在、誰でも簡単に利用できるようになりました。
公的な証明書などの原本に極めて類似した偽造品も、
以前に比べて容易になっているようです。

いうまでもなく、文書偽造罪などが問題になる犯罪行為です。
(こんなものが横行したら、社会に大変な混乱を招きます。)

誰かが「原本」と言って提示した証明書(例えば、登記事項証明書や運転免許証)が
本当に「原本」なのかを確認することが難しくなっているように思います。

(最近は、マイナンバーカードの偽造品が大量に
日本国内に出回っているというニュースがありました。
自動車運転免許証の偽造品も、それほど珍しくないようです。)

運転免許証なども、法令によって様式が変更されると、
「自分が持っている運転免許証」と「誰かから提示された運転免許証」
のデザインが少しでも違うと
仮にその運転免許証が真正な「原本」であっても、
原本と断定することには躊躇します。

そのような場合は、

運転免許証であれば、ICチップが内蔵されているので、
それを読み込んで原本確認するという方法があります。

登記事項証明書であれば、登記情報提供サービス
という登記簿の情報を直接閲覧したほうが安全ということになります。
(もっとも、元データがサイバーテロリストによって改変されている可能性を
完全に消し去ることはできません。)

もう切りが無いですね。。。

 

(大雑把ですが)まとめると次のようになりました。

・証明書などのコピーの偽造は極めて容易です。
・証明書などの原本の偽造も、それほど難しくありません
・証明書などの原本に偽造の疑いがあっても、それを偽造だと断定するのは容易ではありません
・証明書などに記載されている情報が正しいことを確認するためには
別の方法(登記情報提供サービスやICチップの読み込みなど)を検討する必要がある。

 

 

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