手形等の支払サイトは60日以内に短縮!2024年11月運用開始
2024/10/22
初回登校日 2024/10/22
最終更新日 2024/11/15
この記事の目次
手形の支払いサイトの上限が半分に!
親事業者が下請事業者に対する代金の支払いを
約束手形・電子記録債権の交付、一括決済方法(ファクタリング等)による場合、
その支払サイト(支払期限)が60日を超えるときは、
下請法の割引困難な手形等に該当するおそれがあるものとして
行政指導の対象となります。
運用開始は2024年11月1日からです。
約束手形や電子記録債権を利用する企業は、
支払サイトと資金繰りの見直しが必要となります。
以下、もう少し詳しく解説してみます。
※下請法(正式名称 下請代金支払遅延等防止法)
下請代金の支払遅延等を防止することによつて、
親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、
下請事業者の利益を保護し、
もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とした法律。
※下請法の対象となる取引は、事業者の資本金規模と取引の内容
で定義されています。
・対象となりうる資本金 親事業者1000万円超(=1000万0001円以上)
・対象となりうる取引 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託
※資本金を基準にしているため、資本金の増減手続きによって
下請法の適用から逃れることができます。
この点が問題視されていて、別の基準を設けることが
これから議論されるようです。(2024/10/25の日経記事:後記)
改革の背景
近年、下請代金の支払い条件が業界全体で問題視されていました。
特に、手形を利用した長期の支払いサイトが下請企業の経営を圧迫してきたため、
支払いサイトを短期化し、下請企業を経営を安定化させることが目的です。
なお、政府としては、
まず第一に、下請代金の支払いは現金を推奨しています。
現金払ではなく、手形等の交付による支払の場合には、
できる限り短期間での支払いを推奨しています。
「支払いサイト60日以内」は、上限規制(強制)しているのであり、
60日を推奨している訳ではありません。
この点は、くれぐれも誤解のないようにお願いしたいところです。
割引困難な手形の交付制限
下請法では、割引困難な手形の交付を規制しています。
2024年11月からは、割引困難な手形の交付の判断基準を改定しました。
- 従来:繊維業界90日、その他の業種120日
- 2024年11月以降:一律60日(業種不問)
下請法第4条第2項第2号
「下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関
(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)
による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。」
割引困難手形に該当すると、下請法7条第3項の「勧告」の対象となります。
下請法第7条第3項
「公正取引委員会は、親事業者について
第四条第二項各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、
その親事業者に対し、速やかにその下請事業者の利益を保護するため
必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。」
割引料の親事業者負担を推進
手形等による支払は、主に親事業者の都合によるものなので、
手形の現金化にかかる割引料などの費用を下請事業者が負担しないように、
下請代金を事業者間で十分に協議して決定するするための仕組みが強化されます。
これらの施策により、下請企業の資金繰りを改善し、
経済全体の活性化を図る狙いがあります。
中小企業への影響
この基準改定は、下請事業者となる中小企業の資金繰りを改善する方向に働くでしょう。
手形サイトの短縮や割引料の負担軽減により、
下請事業者の資金繰りが改善し、経営の安定が期待されます。
大雑把ですが、従来基準は120日でしたが、それが半分になります。
つまり、下請事業者が普段確保している運転資金が半分くらいで足りる
ようになる下請事業者もあるかもしれません。(当然、事業者によりますが。)
また、支払期限が前倒しになれば、それだけ貸倒れの危険性が減ることになり、
親事業者の倒産による連鎖倒産リスクも軽減されることになります。
親事業者への影響
この基準改定により、親事業者は、短期間での支払いを求められるため、
資金繰りの見直しが必要となる可能性があります。
(すでに対策済みだと思いますが。)
建設業法と関係
建設業法では、特定建設業の許可業者は、
自らが注文者となった建設工事の請負契約に係る下請代金の支払いについて、
当該支払いを受ける下請負人が比較的規模の小さい建設業者である場合には、
一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形
(以下「割引困難な手形」という。)を交付してはならない、
とされています。(建設業法第24条の6第3項)
そして、建設業法上の「割引困難な手形」についても、
国土交通省により、上記の基準改定に合わせて同趣旨の基準改定がされました。
従って、2024年11月以降、
特定建設業者は、下請負人(下記の除外される下請人を除く)に手形を交付する場合、
その支払サイトが60日を超えるときは、建設業法が禁止する「割引困難な手形」に該当し、
これに違反するおそれがあります。
上記ルールが適用されない(除外される)下請負人
・特定建設業の許可業者 ※建設業許可には、「特定」と「一般」があります。
・資本金4000万円以上の法人 ※建設業の許可の有無は関係ありません。
国道交通省の通達では、
下請法に関する公正取引委員会の通達と異なり、
規制の対象として電子記録債権やファクタリングについては、明記されていません。
ただし、公正取引委員会の通達には、次の文言がありますので、
少なくとも努力義務が求められていると考えられます。
「下請法対象外の取引についても、手形等のサイトを60日以内に短縮する、代
金の支払をできる限り現金によるものとするなど、サプライチェーン全体での支
払手段の適正化に努めること。とりわけ、建設工事、大型機器の製造など発注か
ら納品までの期間が長期にわたる取引においては、発注者は支払手段の適正化と
ともに、前払比率、期中払比率をできる限り高めるなど支払条件の改善に努める
こと。」
フリーランス法との関係
2024年11月から運用が始まるフリーランス法と下請法のいずれにも違反する行為については、
原則としてフリーランス法が優先して適用されて、同法の勧告がされます。
また、建設業の一人親方(社長のみの法人も)も、要件に該当すれば
フリーランス法の保護を受けることになります。
※フリーランス法(正式名称 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、
特定受託事業者(従業員なしの個人事業主、従業員なしで役員は社長のみの法人 ≒ フリーランス)
に業務委託をする事業者(特定業務委託事業者)について、
給付(業務、仕様)の内容、報酬の額、支払時期等の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、
取引の適正化及びフリーランスの就業環境の整備を図り、
もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とした法律です。
まとめ
2024年に施行される下請代金の支払いに関する新指導基準は、
業界全体にとって大きな変革となります。
手形サイトの短縮化、割引料の負担軽減、
そして手形廃止(2026年度予定)に向けた取り組みは、
中小企業の活力を引き出し、健全な取引慣行を確立するための重要な一歩です。
親事業者と下請事業者が協力し、適切な対応を取ることで、
双方にとってメリットのある取引関係の構築が期待されていると思います。
条文など
下請法
下請法の解説・資料(公正取引委員会)
建設業法
(令和6年4月30日)「手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の変更について」 の発出について
フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組
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