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代表取締役の住所の非表示制度って、どんな感じ?司法書士が解説します

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最終更新日 2026/08/17

 

会社や法人の代表者になると、その方個人の自宅住所が登記簿に記載され、第三者から確認できる場合があります。

「会社を経営しているだけなのに、自宅の住所まで誰でも調べることができるのは困る。」
このように感じる経営者の方もいらっしゃると思います。

この問題に対応するため、代表取締役等住所非表示措置という制度が2024年10月から始まっています。

さらに、2026年7月、法務省はこの制度を大幅に拡大する省令案を公表しました。
2026年12月から、株式会社以外の会社や、医療法人、学校法人、NPO法人などの各種法人等にも対象を広げる予定です。

この記事では、現在の制度と、2026年に予定されている改正について、会社・法人の経営者の方向けにできるだけ分かりやすく解説します。

 

まず具体例 住所はどこまで見えなくなるの?

 

この制度を利用すると、代表取締役等の住所の一部が表示されなくなります。

例えば、次の住所が登記されているとします。

現在 福岡市博多区博多駅前3丁目7番1号

非表示措置後 福岡市博多区

代表取締役等住所非表示措置を利用した場合の登記簿の表示例(法務省ホームページから引用)

ここで注意していただきたいのは、「住所を登記しなくてよくなる制度」ではないという点です。

法務局には、従来どおり「福岡市博多区博多駅前3丁目7番1号」という完全な住所が登記されます。

そのうえで、一般の人が取得する登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)や登記事項要約書などでは、行政区画より後ろの住所を表示しない仕組みです。

指定都市である福岡市の場合は「福岡市博多区」まで表示され、それより後ろが表示されなくなります。

 

制度趣旨

 

会社の代表取締役等の住所は、会社の登記簿に記載される情報です。

登記事項証明書は誰でも取得できますし、「登記情報提供サービス」を利用してインターネットから登記情報を確認することもできます。

そのため、自宅住所が第三者に知られ、SNSなどで拡散されたり、見知らぬ人が自宅を訪問したりすることへの不安が問題となっていました。

そこで、会社・法人に関する情報公開の必要性と代表者個人のプライバシー保護とのバランスを図るために設けられたのが、この住所非表示制度です。

 

現在の対象となる法人・対象者

 

2026年8月17日現在、通常の住所非表示措置を利用できるのは株式会社です。

特例有限会社、合同会社などの持分会社、一般社団法人、医療法人、学校法人、NPO法人などは、現在の制度では対象外です。

対象となるのは、住所が登記される次の役員です。

・代表取締役
・代表執行役
・代表清算人

ただし、この対象範囲が2026年12月から大幅に広がる予定です。

 

2026年12月 株式会社以外にも対象を大幅拡大する予定

 

法務省は2026年7月24日、「商業登記規則等の一部を改正する省令案」を公表しました。

この改正案では、現在は株式会社に限られている制度を、全ての会社に拡大するとされています。

例えば、現在は対象外となっている次のような会社も対象となる予定です。

・合同会社
・合名会社
・合資会社
・特例有限会社 など

さらに、「会社以外の法人」等にも制度を広げる改正案となっています。

例えば、

・一般社団法人、一般財団法人
・医療法人
・学校法人
・社会福祉法人
・NPO法人
・宗教法人
・司法書士法人、行政書士法人などの士業法人
・その他の各種法人等

についても、住所が登記事項となっている代表者等について、非表示措置を利用できる範囲が大きく広がる予定です。

また、インターネットで登記情報を確認できる「登記情報提供サービス」についても同様の措置が予定されています。

施行時期は2026年12月が予定されています。

ただし、2026年8月17日現在は、まだ「省令案」の段階です。
正式な施行日、対象者、具体的な申出方法などについては、正式な省令の公布後に改めて確認する必要があります。

 

注意! 2026年12月に全部変わるわけではありません

 

今回のニュースで少し分かりにくいのが、この点です。

政府は、対象となる法人を増やすだけではなく、現在の住所非表示制度そのものを使いやすくすることも検討しています。

2026年7月21日に閣議決定された「規制改革実施計画」では、次のような改善方針が示されています。

① 過去に登記された住所についても非表示の対象にする
② 登記申請と同時でなくても、住所非表示だけを申し出られるようにする
③ 代表者本人やその委任を受けた人が、完全な住所の記載された登記事項証明書等を取得できるようにする
④ 銀行融資や不動産取引などで困らないよう、制度や確認書類について周知を改善する
⑤ 正当な理由がある第三者が代表者の住所を確認するための手続を改善する

ただし、①~③などが2026年12月から同時に始まると決まったわけではありません。

2026年12月の省令改正案で具体的に予定されているのは、主として「対象となる会社・法人等を広げること」です。

過去の住所を非表示にすることや、好きな時期に単独で申し出ることなどについては、2026年度中に結論を出し、その後速やかに措置する予定とされています。

 

過去に登記された住所はどうなるの?

 

現在の制度では、非表示措置をする前にすでに登記されている過去の住所まで消えるわけではありません。

例えば、

以前からの登記
福岡市博多区博多駅前3丁目7番1号

その後、重任登記などの際に住所非表示措置を利用
福岡市博多区

という場合でも、過去に登記された住所の表示が残ることがあります。

これでは、せっかく現在の住所を非表示にしても、過去の登記記録から同じ住所を確認できてしまうことがあります。

政府もこの問題を認識しており、過去に登記された代表者等の住所についても非表示の対象とする方向で検討することになっています。

この点は、実務上かなり大きな改善になると思います。

 

現在の利用方法、タイミング

 

2026年8月現在は、一定の登記手続きを法務局に申請する際に、同時に非表示の申出をする必要があります。

代表的なものは次の登記です。

① 設立登記
② 他の管轄の法務局へ本店移転する場合の新本店所在地での登記
③ 代表取締役等の就任(重任を含む)登記
④ 代表取締役等の住所変更による変更登記
⑤ 清算人・代表清算人についての一定の登記

つまり現在は、

「特に登記する予定はないけれど、今日から自宅住所だけ非表示にしたい。」

という申出を単独ですることはできません。

この点についても、政府は将来、登記申請と同時でなくても非表示措置を申し出られるようにすることを検討しています。

一方、非表示措置をやめて通常の表示に戻す旨の申出は、登記申請と同時でなくても行うことができます。

 

一度非表示にしたら、重任登記のたびに再度申出が必要?

 

ここは、以前の記事から補足・修正しています。

すでに住所非表示措置を受けている代表取締役等について、住所に変更がない重任・再任等の登記をする場合には、原則として改めて住所非表示措置の申出をする必要はありません。

同じ住所を登記する場合には、非表示措置が引き続き行われます。

これに対して、引っ越しなどで代表取締役等の住所そのものが変わった場合には、住所変更登記と併せて改めて非表示措置の申出をする必要があります。

 

住所を非表示にした後に引っ越したら?

 

住所が一部非表示になっていても、法務局には完全な住所が登記されています。

したがって、代表取締役等が引っ越して住所が変わった場合には、従来どおり住所変更登記が必要です。

例えば、

登記簿上の表示 福岡市博多区
法務局に登記されている完全な住所 福岡市博多区博多駅前3丁目7番1号

次の住所に引っ越したとします。

新住所 福岡市博多区博多駅前3丁目7番10号

登記事項証明書の見た目ではどちらも「福岡市博多区」ですが、法務局に登記されている住所は変わっています。

そのため、新しい住所への変更登記が必要です。

株式会社の場合、登記事項に変更が生じたときは、原則として変更から2週間以内に変更登記をする必要があります(会社法第915条第1項)。

そして、新しい住所についても非表示を希望する場合には、住所変更登記と同時に改めて非表示措置の申出をします。

 

デメリットはないの?

 

プライバシー保護という点では大きなメリットがありますが、利用前に確認しておいた方がよい点があります。

住所非表示措置を利用すると、通常の登記事項証明書には代表取締役等の完全な住所が表示されません。

そのため、例えば、

・銀行から融資を受ける場合
・銀行口座の手続きをする場合
・会社が不動産を売買する場合
・重要な契約を締結する場合

などに、相手方から別の本人確認資料や住所確認資料を求められる可能性があります。

会社の代表取締役の印鑑証明書(法務局が発行するもの)には、会社名、本店、代表者の資格・氏名・生年月日などが記載されますが、代表者の自宅住所は記載されません。

したがって、会社の印鑑証明書だけで代表者の完全な住所を確認できるわけではありません。

会社の印鑑証明書の見本

実際にどのような追加資料が必要になるかは、銀行や取引先などによって異なる可能性がありますので、重要な取引を予定している場合は事前に確認してください。

なお、政府もこの問題を認識しています。

2026年の規制改革実施計画では、金融機関、不動産取引関係者、司法書士その他の関係事業者に対して制度や住所確認書類について情報提供を行うことや、代表者本人等が完全な住所の記載された登記事項証明書等を取得できる仕組みを検討することとされています。

 

申出の際に負担はないの?

 

以下は、2026年8月現在の株式会社についての手続です。

非表示措置の申出の際には、通常の登記申請の書類に加えて、一定の確認書類が必要になります。

※中小企業の場合、準備する書類がそれなりにあります。

住所非表示措置の申出そのものについて、法務局の追加手数料はかかりません。
司法書士に手続きを依頼する場合には、司法書士の報酬・手数料がかかります。

 

上場会社以外の株式会社の場合 ※ほとんどの中小企業はこちら

大きく分けて、次の3種類の確認が必要です。

(1) 会社が本店所在地に実在していることの確認
(2) 代表取締役等の氏名・住所の確認
(3) 会社の実質的支配者の確認

 

(1) 会社が本店所在地に実在していることの確認

例えば、次のいずれかの方法があります。

・その株式会社を受取人として、本店所在地に配達証明郵便を送り、所定の書類を提出する方法

・登記申請を受任した司法書士等の資格者代理人が、その株式会社の本店が登記上の所在地に実在することを確認した書面を提出する方法

配達証明郵便を利用する場合には、配達証明書のほか、会社の商号と本店所在地等が確認できる郵便物受領証などが必要になります。

※配達証明書等に記載された株式会社の商号や本店所在地が登記記録と合致しない場合には注意が必要です。

資格者代理人による実在確認を利用する場合、登記申請を業として代理することができる司法書士等による確認が必要です。

(郵便物受領証の見本、郵便事業者ホームページから引用)
郵便物受領証の見本

 

(2) 代表取締役等の氏名・住所の確認

例えば、次のような書類を提出します。

・住民票の写し
・戸籍の附票の写し
・印鑑証明書
・運転免許証、個人番号カード等のコピーに、本人が原本と相違ない旨を記載して記名したもの など

同じ書類を登記申請そのものの添付書類として提出している場合には、非表示措置のために重ねて提出する必要がない場合があります。

 

(3) 実質的支配者の確認

例えば、次のような書類・方法があります。

・登記申請を受任した資格者代理人が、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づいて確認した実質的支配者の本人特定事項に関する記録の写し等

・定款認証の際に公証人に申告した実質的支配者に関する一定の証明書

・法務局の「実質的支配者リスト制度」を一定期間内に利用していることを登記申請書に記載する方法 など

会社の状況や登記の内容によって必要書類が変わりますので、実際に利用する場合には個別に確認することをおすすめします。

なお、すでに住所非表示措置を受けている株式会社について改めて申出をする場合には、必要書類の一部を省略できる場合があります。

 

株式上場している株式会社の場合

株式が上場されていることを確認できる金融商品取引所のホームページの写しなどを提出する方法があります。

2026年12月の制度拡大後に、株式会社以外の会社・法人等について具体的にどのような書類が必要になるかは、正式な省令や法務省の取扱いが公表された後に改めて確認する必要があります。

 

この制度、実際にはどのくらい利用されているの?

 

内閣府が2026年7月に公表した資料によると、2026年3月までの住所非表示措置の累計実施件数は19,112件です。

制度開始から約1年半で約1万9千件が利用されたことになります。

一方で、現在は株式会社しか利用できないこと、申出ができるタイミングが限定されていること、必要書類の準備が必要なことなど、利用しにくい部分もあります。

今回予定されている制度改正には、こうした使いにくさを改善する目的もあります。

 

非表示措置を解除することはできる?

 

はい。

会社から法務局に住所非表示措置を希望しない旨を申し出て、通常の表示に戻すことができます。

この申出は、登記申請と同時でなくても行うことができます。

また、会社の本店が登記上の所在地に実在すると認められない場合や、上場会社として非表示措置を受けていた会社について上場会社でなくなったと認められる場合などには、登記官によって非表示措置が終了することがあります。

したがって、住所非表示措置を利用しても、会社の本店を登記どおりの場所に適切に置いておくことは重要です。

 

その会社の代表者の住所を確認する必要がある場合はどうすれば?

 

住所非表示措置は、代表者の住所を法務局から完全に消してしまう制度ではありません。

例えば、裁判をするために相手方会社の代表者住所を確認する必要があるなど、正当な理由がある場合には、商業登記法第11条の2に基づく登記簿の附属書類の閲覧請求などによって住所を確認できる場合があります。

ただし、誰でも自由に閲覧できるわけではありません。

利害関係や閲覧する正当な理由を示す資料が必要になります。

現在の実務では、利害関係を証明する資料として訴状案の写しなどを求められることがあり、住所を確認するまでに時間がかかるという問題も指摘されています。

政府は2026年の規制改革実施計画で、訴状案以外の書類でも利害関係を証明できることを明確にすることや、正当な理由がある第三者等が代表者住所をより迅速に確認できる仕組みについて検討する方針を示しています。

 

どんな人に利用価値が高そう?

 

個人的には、特に次のような方は、この制度を利用するメリットが比較的大きいと思います。

・自宅を会社代表者の住所として登記している方
・ホームページやSNSなどで代表者氏名を広く公表している方
・不特定多数の顧客と接する事業をしている方
・自宅住所をインターネット上などで特定されることに不安がある方

2026年12月の改正が予定どおり実施されれば、これまで利用できなかった合同会社の代表社員や、医療法人、学校法人、NPO法人などの代表者等にも検討の機会が広がります。

一方で、銀行融資や不動産取引などを予定している場合には、相手方がどのような本人確認・住所確認を求めるかを事前に確認してから利用を決めるのも一つの方法です。

雑感など

 

この制度が始まった2024年当時は、必要書類も多く、銀行や不動産取引などでどのように取り扱われるか分からない部分も多かったため、このページでも慎重な利用をおすすめしていました。

その後、実際の利用件数も増え、さらに政府は2026年に「対象となる法人を広げる」「過去住所も非表示にする」「登記がなくても申出できるようにする」「本人等が完全住所入りの証明書を取得できるようにする」という方向を明確にしました。

制度としては、かなり使いやすくなる方向に進んでいると思います。

特に、自宅住所の公開を理由に法人設立や代表者への就任をためらっている方にとっては、利用価値のある制度になっていくでしょう。

もっとも、2026年12月の改正予定と、その後の制度改善は別の話です。

省令が正式に公布された際には、このページも再度更新したいと思います。

 

まとめ

 

ポイントをまとめます。

・現在は、株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人の住所について、一部を非表示にできる。

・完全な住所を法務局に登記しなくてよくなる制度ではなく、登記事項証明書などへの表示を一部省略する制度。

・現在は、一定の登記申請と同時に非表示措置を申し出る必要がある。

・2026年12月から、合同会社などの他の会社や、医療法人、学校法人、NPO法人などの各種法人等へ対象を大幅に広げる予定。

・過去に登記された住所の非表示、登記と関係なく申し出られる制度、本人等が完全住所入りの証明書を取得できる制度などは、別途検討中。

・住所が変わらない重任等では、すでに非表示になっていれば原則として非表示が継続する。

・引っ越して住所そのものが変わった場合には、住所変更登記と改めて非表示措置の申出が必要。

制度の利用を検討する場合には、ご自身の会社・法人の種類、現在の登記内容、今後予定している登記、銀行融資や不動産取引の予定などを確認したうえで判断することをおすすめします。

 

項目 現在 2026年12月の省令改正案 さらに検討中
株式会社
合同会社・合名会社・合資会社 × ○へ拡大予定
一般社団・一般財団法人 × ○へ拡大予定
医療法人 × ○へ拡大予定
学校法人 × ○へ拡大予定
NPO法人 × ○へ拡大予定
宗教法人等 × ○へ拡大予定
過去に登記された住所 原則表示されたまま 今回の省令案では対応しない 非表示化を検討
登記申請とは無関係な時期の申出 原則不可 今回の省令案では対応しない 単独申出を検討
本人だけ完全住所入り証明書を取得 不可 今回の省令案では対応しない 取得可能化を検討

条文・公的資料など

現行制度の主な根拠は、商業登記規則第31条の3です。

代表取締役等住所非表示措置について(法務省)

「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見募集(e-Gov・法務省)

規制改革実施計画(令和8年7月21日閣議決定・内閣府)

規制改革実施計画 実施事項説明資料(内閣府)

現行制度:商業登記規則第31条の3
現行制度創設:商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)

 

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司法書士 木崎正亮

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司法書士・行政書士 木崎正亮 (法務大臣認定司法書士)

~相続・遺言と中小建設業の法律・行政手続に強い専門家~

 

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