株主総会って、省略できるらしいよ? 司法書士が解説します。
2020/04/28
最終更新 2020/04/28
この記事の目次
株主総会って省略できるの!?
はい。省略できる場合があります。
会社法に、株主総会の開催を省略できるルールがあるのです。
「株主総会の決議の省略」と呼ばれます。
株主総会で決めるべき事項(議案)があれば、
それについて株主の全員(議決権を持たない株主を除きます。)から
書面または電磁的記録(電子メールなど)(以下、単に「書面」とします。)によって同意してもらう方法です。
※書面と同等の「電磁的記録」については、後でご説明します。
特に注意しなければならない点として、次のような点があります。
・口頭での同意では足りません。書面が必要です。
何かしらの理由で書面を提出してくれない株主がいると、この手続は成立しません。
・常に、議決権のある株主全員の同意が必要です。多数決ではありません。
ほんの一部にでも反対の株主がいると、この手続は成立しません。
株主が何十人もいるような会社では、
この方法を採用することは避けた方が安全です。
つまり 書面による議決権行使ってこと?
これと似たものに「書面による議決権行使」という制度があります。
しかし、似ているけど別物です。
次のような点で、株主総会の開催省略の場合と違います。
・この書面による議決権行使の制度を利用する場合は、
株主総会自体は、必ず開催しなければなりません。
・書面によって議決権を行使した株主は、
その株主総会に出席したことになります。
・議案の採決は、多数決になります。
・実際に株主総会に出席したい株主は、出席することができます。
株主総会の開催省略が難しい場合は、
書面による議決権行使の制度を利用することを検討してみましょう。
株主総会への報告は どうするの?
株主総会に報告すべき事項がある場合は、
株主の全員にその内容を知らせて、報告を省略することについて
株主全員の書面等による同意を得れば、
その報告があったものとみなすことができます。
取締役会も省略できるの!?
取締役会開催の省略は、「取締役会の決議の省略」と呼ばれます。
これは、できる会社とできない会社があります。
取締役会の開催を省略するためには、
定款に省略制度を採用することを定める必要があります。
「当会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす」
といったような条項です。
もっとも、取締役会は、取締役や監査役(役員)などで組織されますが、
その人数は、4名~数十名にも及び、会社によってマチマチです。
テレビ会議や電話会議を利用して遠方から出席することもできます。
株主総会の場合と違う点
書面による議決権行使の制度は、取締役会にはありません。
取締役会の開催を省略する場合を除き、
取締役などの役員は、取締役会に出席する義務があります。
(テレビ電話等でも構いません。)
書面と同等の電磁的記録って何?
ITの進歩により、書面の代わりにコンピュータデータを用いる手法を採用することができるようになりました。
・電子メールで同意の意思表示をしてもらう
・専用のコンピュータシステム上で同意してもらう
・電子媒体(CDやフラッシュメモリなど)を提出してもらう
・など(最近はほとんど見かけない、フロッピー・ディスク※とか)
が考えられます。
電子メールで同意してもらった場合は、
原本として扱うべきなのは、その電子メールデータです。
電子データを会社に10年間保存する義務があります。
メールをプリントアウトしたものは、
原本ではなく、コピーという扱いになります。
株主総会などを省略した場合の議事録は?
株主総会や取締役会の開催を省略した場合も、
株主総会議事録や取締役会議事録を作成しなければなりません。
議事録の記載内容や保管方法は、通常の議事録と少し違います。
会社法施行規則という細かい法令に事細かに記載されています。
ご興味がおありのかたは、そちらをご覧ください。
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