2020年4月から消滅時効制度が変わりました。司法書士が解説します。
2020/12/01
最終更新日 2020/12/01
この記事の目次
消滅時効の制度が変わりました
2020年4月から 消滅時効の制度が変わりました。
時効の制度には、いくつかの種類がありますが、
今回改正されたのは、消滅時効の制度です。
※消滅時効のほかに、取得時効、公訴時効、刑の時効 があります。
消滅時効とは、
権利があってもそれを一定の期間継続して行使しないでいると、
その権利の消滅が認められる制度をいいます。
例えば、知人にお金を貸した後、返済期限が到来した後も何年も返済行為がなく、
返済の請求もしていないと、消滅時効が成立して、
その知人に対して返済させる権利(請求権)が消滅することがあります。
主な変更点
消滅時効に関するルールの主な変更点は、次のとおりです。
(1)消滅時効の期間の統一(従来のバラバラ → 原則5年に統一)
(2)協議による時効の完成猶予制度
(3)用語の改訂
時効の中断→時効の更新(時効が一旦リセットされて、ゼロからスタート)
時効の停止→時効の完成猶予(時効の完成が一定期間猶予される。)
今回は、(1)の消滅時効の期間の統一(短期の消滅時効の廃止)について、簡単に解説してみます。
なお、下記の説明は一般的な場合として説明しています。(例外的な場合もあります。)
時効期間の統一
権利の種類によって消滅時効の期間がバラバラでしたが、
これが統一されました。
例として
従来のルール
「飲み屋のツケ」
債権者が権利行使できる時から1年
「物品売却の代金」
権利行使できる時から2年
「知人に対する貸金」
権利行使できる時から10年
4月以降の新ルール
「飲み屋のツケ」
「物品の売却代金」
「知人に対する貸金」
いずれの場合も、
債権者が 権利行使できる(弁済期限到来)ことを知った時から5年
または 権利行使できる時(弁済期限到来)から10年
ただし、例外もあります。
新ルールなのか旧ルールなのか、その適用の基準は?
改正法の適用は、
その債権の発生が契約に基づく場合 → 契約日が基準になります。
その債権の発生が契約以外の原因に基づく場合 → 債権の発生日が基準になります。
契約に条件(例えば、役所の許可がでた場合)を付けた場合、
その条件の成就(役所の許可が出た!)が4月1日以降であったとしても、
契約日が3月31日よりも前であれば 従来のルールが適用されます。
例
「飲み屋のツケ」
飲食した日に代金支払い請求権が発生するので、
3月31日以前 → 旧ルールが適用
4月1日以降 → 新ルールが適用
「物品の売却代金」
売却代金支払請求権の発生の原因となる売買契約の成立が
3月31日以前 → 旧ルールが適用
4月1日以降 → 新ルールが適用
※3月31日に売買契約が成立し、その代金の支払期限が4月30日の場合、
旧法が適用されるので、4月30日の支払期限の翌日である
5月1日から起算して2年で消滅時効が成立することになります。
「知人に対する貸金」
貸金返還請求権の発生の原因となる貸金契約の成立が
3月31日以前 → 旧ルールが適用
4月1日以降 → 新ルールが適用
※3月31日に貸金契約が成立し、その返済期限が4月30日の場合、旧法が適用されるので、4月30日の支払期限の翌日である5月1日から起算して10年で消滅時効が成立することになります。
交通事故や薬害などの不法行為による損害賠償請求権の場合は、
3月31日までに消滅時効が成立していなければ、
その損害発生の原因となった行為が3月31日以前であっても、
新ルールが適用されます。
例
交通事故の発生が2017年3月1日の場合、
従来のルールが適用されて、
消滅時効の成立時期は、3年後の2020年3月1日となります。
交通事故の発生が2017年4月1日の場合、
従来のルールが適用されると、
消滅時効の成立時期は、3年後の2020年4月1日(午後の24時)
となるのですが、
4月1日午前の0時には、新ルールの運用が始まっていますので、
消滅時効の期間5年の新ルールが適用されて、
2022年4月1日まで、つまり2年間延びることになります。
契約の更新と新ルールの適用の関係には注意が必要
2020年3月以前からの取引契約でも、2020年4月以降に更新があると
新しいルールが適用されることがありますので、注意が必要です。
続きは、また次のブログで解説いたします。
条文など
(法務省ホームページ 債権法改正)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
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