新型コロナウイルスで必要性が増した補助金制度。基本ルールを司法書士が解説!
2020/05/19
最終更新 2020/05/19
この記事の目次
補助金(ほじょきん)って何?
国や地方自治体から受けることができる補助金制度。
この記事でご説明する補助金とは、
「補助金(ほじょきん)とは、
政府が私企業や個人などの民間部門に対して行う一方的な貨幣の給付」
(Wikipediaから引用)をいいます。
※このブログでは、企業向け補助金を想定しています。
一般家庭向け補助金では参考にならないと思います。
補助金制度を利用するメリット
金融機関から融資を受ける場合と異なり、返済する必要がないお金です。
返済しなくてよいお金を国や市町村などからもらえる!
これが補助金制度を利用する最大のメリットです。
※補助金は、通常、雑収入として、収入に計上されます。
※このたびの新型コロナウイルスに関連する
「持続化給付金」とは少し違いますので、ご注意ください。
補助金制度を利用するデメリット
- 行政からの監督を受ける。
補助金に関する事業などについて、定期的に報告したり、調査に応じる義務があります。
- 勝手に事業を中止できない。
補助金に関する事業を中止するときには、監督行政機関に事前承認を得なければなりません。
事情によっては、補助金の返還が必要になることもあります。
- 社会資本の浪費の温床に
補助金ありきの事業計画で、事業自体に真剣に取り組まず、社会資本の浪費を生むことも珍しくない。
「どうせ補助金だから、体裁だけ整えておこう」みたいな。
- 犯罪を誘発するおそれ
不正受給などを誘発する危険があり、結果として、企業の健全な成長に水を差してしまう。
「補助金を使わなければ健全に成長できたのに、変なコンサルタントに騙された。。。」
- 一時的に多額の資金を準備する必要
後払いが多いので、補助金の支給を受ける(振り込まれる)までの間、
別の方法で事業資金を準備して、販売事業者などに支払う必要があります。
※先払いの補助金もあります。
- 経費の一部は自己負担
補助対象経費の一部(50%、80%など)が支給される補助金の場合、
当然、残りの部分は、自己負担になります。
※全額補助の場合もあります。
こんな補助金があるよ
中小企業支援策として有名な補助金として、次のようなものがあります。
(ほんの一例です。)
- ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
生産性向上のための設備投資や革新的サービスの開発事業などの支援
を目的とした補助金制度。
- IT促進補助金
IT(情報技術)を導入することにより
生産性向上や販路拡大などを図る事業者の支援
を目的とした補助金制度。
- 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が販路拡大のために制作する広告物
(ホームページやパンフレットなど)の制作費などの補助
を目的とした補助金制度。
補助金に関する基本ルールを決めた法律
「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」というものがあります。
名前が長いので、以下「補助金適正化法」といいます。
補助金適正化法で決められている事項のうち
補助金の利用者にとって特に重要だと思われる事項について
簡単に確認してみます。
- 補助金適正化法の目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 補助金等の交付の申請及び決定(第五条―第十条)
第三章 補助事業等の遂行等(第十一条―第十六条)
第四章 補助金等の返還等(第十七条―第二十一条)
第五章 雑則(第二十一条の二―第二十八条)
第六章 罰則(第二十九条―第三十三条)
- 補助金適正化法の目的 同法第1条
「この法律は、補助金等の交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、
補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行
並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的とする。」
補助金の不正な申請、補助金の不正な使用の防止など
を目的とした法律です。
不正な申請などには、刑事罰があります。(後記)
補助事業者の主な義務
※補助事業者とは、補助金の交付の対象となる事務や事業を行う個人や法人です。
- 善管注意義務
補助金は、補助対象事業をするために使えるお金ですが、
国民から集められた税金から支払われるお金です。交付目的に沿って使う義務があり、
他の目的で使うことはできません。
違反すると刑事罰があります。(後記)
- 補助事業の遂行状況の報告義務
補助事業者は、交付ルールなどに従って、
補助事業の遂行の状況を行政機関に報告する義務があります。
- 補助事業の成果の報告義務
補助事業者は、交付ルールなどに従って、
補助事業が完了したとき(補助事業の廃止の承認を受けたときも。)は、
補助事業の成果を記載した補助事業実績報告書に、
必要書類を添付して、行政機関に報告する義務があります。
- 現地調査等に応じる義務
行政機関は、補助事業の完了又は廃止に関する成果の報告を受けた場合には、
報告書などの書類の審査及び必要に応じて実施する現地調査等により、
その報告内容が補助金の交付の決定の内容に適合・不適合の調査し、
適合すると認めたときは、交付すべき補助金の額を確定し、
その補助事業者に通知されます。
もしも、完了などの報告内容が補助金の交付の決定の内容と不適合の場合には、
適合させるための措置をとるように指示されることがあります。
補助金に関する決定への不服申立て
補助金適正化法の対象になる補助金に関して行政機関がする決定(行政処分)には、
決定内容に不満があっても不服申立てができません。
(一般的に行政手続の不服申立てを認める行政手続法の2章・3章が適用されず、
また、補助金適正化法にも不服申立てを認める規定が準備されていません。)
裁判所に対して行政処分の取消しなどを求める裁判を起こすことができない場合もあります。
(書籍などによると、補助金の種類によって変わるようです。)
刑罰などのペナルティ!
- 不正受給
偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けた者は、
5年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑
を科されることがあります。
「懲役5年以下」は、かなり重たい罰です。
- 目的外使用
補助金を他の用途へ使用した者は、
3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑
を科されることがあります。
こちらも重たいですね。
- 補助金の返還命令
補助金の返還命令を受けることがあります。
返還のみならず、年利 約11% の延滞金も請求されることがあります。
- 社名の公表など
不正受給が判明した場合は、会社名などが公表されます。
補助金の不正受給の事件は、時折ニュースで見かけますね。
補助金には、数万円~億以上まで、その規模は様々です。
規模が大きい補助金の場合はもちろんのこと、
規模が比較的小さい補助金の場合でも不正受給は許されませんし、
取り締まりの対象になりますので、
くれぐれも不正受給をなさらないようにしてください。
「益城町の宅地復旧補助金を不正受給 業者、水増し申請か
熊本地震で傾いた家などを修復するために自治体が補助を行う宅地復旧支援事業で熊本県益城町は31日、
工事代金を水増しして申請した補助金の不正受給が3件、計198万円確認されたと発表した。」
(2019/9/1 西日本新聞から引用)
不正受給の例
- 請求を水増しする。(取引先などと共謀して)
- 契約書や領収書の日付などを改ざんする。(取引先などと共謀して)
補助金の受給を手伝ってくれる事業者の中には
上記のような手法をすすめてくる者もいます。
(知ってか知らずかは、知りませんが。)
そのような口車に乗らないようにご注意ください。
補助金の手続の一般的な流れ
※この流れと異なる場合もあります。
- 公募(募集)開始
- 補助金の認定申請
- 認定可否の審査
- 認定決定通知(又は不認定決定通知)
- 補助事業の開始
- 補助事業の遂行状況の報告
- 補助事業の完了報告
- 補助金の交付申請
- 完了報告等の内容の審査
- 補助金の交付決定通知
- 補助金の交付(振込み)
補助金制度は、政府が考える一定の政策目的を達成するために
税金を原資として
民間企業などに資金の再分配を行う制度であり、
民間企業などが実施する事業を促進・「補助」することが目的です。
補助金の受給成功ではなく、
補助金の有無にかかわらず、その事業自体の成功を目指して
事業計画を立案し、遂行していただくことが大切だと思います。
補助金は、その言葉のとおり あくまで「補助」です。
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司法書士 木崎正亮
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