成年後見制度を利用していても職業制限を受けなくなる!?

2019/06/17
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最終更新 2020/05/03


 

成年後見制度を利用すると就けない職業がある?

 

これまでは。。。

 

成年後見制度を利用して

成年被後見人 または 被保佐人 になると、

一部の職業に就けない、一部の営業許可が受けられないなど

一部の職業について制限を受けていました。

 

制限ルールの定めかた変更されて、今後は。。。

 

今回、その制限ルールの「定めかた」を変更する法改正が行われました。

そこで、その内容を簡単に確認してみました。

 

(成年被後見人とは、精神上の障がいににより

判断能力を常に欠いている状況にある人のうち

裁判所から後見開始の審判を受けた人)、

(被保佐人とは、精神上の障がいにより

判断能力が著しく不十分な人のうち

裁判所から保佐開始の審判を受けた人)

 

制限ルールの「定めかた」を変更した理由

 

職業制限の例

 

成年後見制度を利用していると

・営業許可(建設業、古物営業など)を受けられない、または免許取消し

・会社などの法人の役員になれない、または役員を強制退任

・士業(司法書士、税理士、弁護士等)の免許を受けられない、または免許剥奪

という制約(欠格事由)を受けます。

 

成年後見制度を利用しているといっても、その事情は様々でしょ?

 

単に成年後見人制度を利用しているという理由だけで職業等を制約することは、

同制度の利用者の人権を不当に制約しており、

そのことが同制度の適正な利用を妨げている

という声があった(らしい)ので、

このたびの国会で、これらの制約を見直す改正法が成立しました。

 

その法律の名称は

「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」

です。(名前が長い。。。)

 

法改正の影響は?

 

ほとんどの法律では、上記の制約の代わりに

「心身の故障」といったような基準 が用いられることになるので、

成年後見制度を利用している場合には、その大半がこれまでの結果と変わらない

(営業許可をもらえないなど)という結果になるように思います。

 

むしろ、

成年後見制度を利用しているか否か という明確な基準に比べて

「心身の故障」という曖昧な基準が 用いられることになるので、

これまでは欠格事由に該当しなかった人も、

基準への当てはめの運用の仕方によっては「心身の故障」に該当すると判断されて、

不測の不利益を被るというトラブルが増えるおそれがあります。

 

 

(そういえば、

先日、九州の某市の行政機関窓口で特定の個人の相談を一切受け付けない、

みたいな御触れを出したというニュースがありました。

この某市の行動の適法性、妥当性については詳細が不明のため、私には判りませんが、

もしも、この「特定の個人」が何かしらの許可申請などを某市に対して行って、

その許可の要件に不許可にすべき事由として「心身の故障」みたいなものが入っていたら、

もしかしたら「心身の故障」という取り扱いを受けてその許可申請が不許可にされるかもしれません。)

 

 

法改正の一例

 

建設業法

改正前は、「成年被後見人若しくは被保佐人」が

事業主または役員になっていると、

欠格事由に該当し、建設業許可が不許可になっていました。

 

これが、改正後には、

「心身の故障により建設業を適正に営むことができない者

として国土交通省令で定めるもの」が

事業主または役員になっていると、

建設業の不許可事由に該当することになりました。

 

なお、法改正の後も、提出書類は、ほとんど変わっていません。

 

古物商(古物営業法)

改正前は、「成年被後見人若しくは被保佐人」が

事業主または役員になっていると、

欠格事由に該当し、古物商の営業許可が不許可になっていました。

 

これが、改正後には、

「心身の故障により古物商又は古物市場主の業務を適正に実施することができない者

として国家公安委員会規則で定めるもの」が

事業主または役員になっていると、

古物商許可の不許可事由に該当することになりました。

 

なお、法改正の後は、提出書類が変わっています。

 

司法書士法

改正前は、「成年被後見人又は被保佐人」に該当すると

司法書士となる資格を有しない、となっていて、

司法書士の登録申請は受け付けられない(門前払い)になっていました。

 

(司法書士は、日本司法書士会連合会という団体に

登録を受けないと、司法書士と名乗ることができず、

司法書士業務(登記や裁判など)をすることができません。)

 

これが、改正後には、

もしも司法書士登録を希望する人が成年被後見人等に該当しても、

司法書士登録の申請は一旦受け付けられます。

そして、その申請内容が審査される中で

「司法書士が心身の故障により司法書士の業務を行うことができないとき」

に該当すると判断されると

登録申請を拒否しなければならない となりました。

 

また、司法書士と同居する親族には、

「司法書士本人が心身の故障により

司法書士の業務を行うことができないおそれがある場合

として法務省令に定める場合」

に該当することとなったときは

その司法書士会にその旨を届出る義務が課されました。

(なお、届出義務違反について、罰則はありません。)

 

 

改正法の運用開始時期

 

(1)省令(施行規則など)の整備が必要な改正

公布の日(官報に改正法が掲載された日)から3か月

(2)欠格条項を削除するのみの改正

公布の日

(3)地方公共団体の条例等

公布の日から6か月

(4)その他上記以外

 

ほとんどの改正は、上記(1)に該当します。(以下、いずれも運用開始済み)

・建設業法 公布の日(官報に掲載された日)から3か月

・古物営業法 公布の日から3か月

・司法書士法 公布の日から3か月

 

・会社法の役員の資格制限については、

公布後1年以内に再検討されることになっています。

 

条文など

 

改正法第7条

(検討)

第七条 政府は、会社法(平成十七年法律第八十六号)及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)における法人の役員の資格を成年被後見人又は被保佐人であることを理由に制限する旨の規定について、この法律の公布後一年以内を目途として検討を加え、その結果に基づき、当該規定の削除その他の必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 

成年被後見人等の権利の制限に係る措置の

適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案

の条文や概要などは、こちらから確認できます。

 

(内閣府)

https://www.cao.go.jp/houan/196/index.html

 


 

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