建設業許可の「経管」基準が変わりました! 建設業許可の専門家が解説!
2019/03/16
最終更新 2020/10/07
この記事の目次
2019年6月4日に建設業法の改正法が国会で成立
個人的に気になる部分について、簡単に確認してみました。
個人的に気になる改正点
(1)許可基準のうち経営管理責任者の基準の見直し
(2)許可を受けた地位の承継
(3)監理技術者の専任義務の緩和
(4)主任技術者の配置義務の合理化
経営管理責任者に関する基準の見直し
今回は、
(1)許可基準のうち経営管理責任者(経管(けいかん)と呼ばれることも)
の基準の見直しについてです。
建設業の許可基準
500万円以上(建築一式は1500万円以上)(いずれも消費税込み)の建設工事を受注して、
工事を施工するためには、建設業の許可が必要です。
※ この金額未満の工事は、「軽微な工事」として、許可がなくても受注して
施工することができます。
つい最近(2020年03月)、違反行為をした内装業者が取り締まられていました。
違反すると、無許可営業で刑事処分を受けることもあります。
建設業の許可を得るためには、必要な基準を満たす必要があります。
この基準を(実体として)満たせなければ、建設業の許可を得ることができません。
経営管理責任者の現在の基準
建設業の許可を受けるためには、
役員(取締役等)のうち常勤であるものの一人(以上)が
建設業に関し五年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
でなければなりません。
(経営管理責任者の制度)
経営管理責任者に関する制度の趣旨
建設業は
- 一品ごとの受注生産 (←対→ 同一物の大量生産)
- 契約金額が多額 (1件の工事で数十億円以上も珍しくない)
- 請負者が長期間の契約不適合責任(従前の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん))を負う(←対→ 普通は6か月とか)
という、他の産業と異なる産業特性を有するため、
適正経営の確保を図る目的である
と国土交通省は説明しています。
経営管理責任者の新基準は こうなった!(新条文)
この基準が次のように変更されました。
建設業法第7条の改正(抜粋)
建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの
として国土交通省令で定める基準に適合すること
「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの」
の具体的な内容は、国土交通省令で定めることになっています。
国土交通省令(建設業法施行規則)
経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとは、
次の①のいずれかに該当している者です。
① 適正な経営能力を有すること(適正な経営体制)
次の(イ)または(ロ)のいずれかの体制を有すること。
(イ)常勤役員等のうち少なくとも1人が下記の(a1)、(a2)、(a3)のいずれかに該当すること。
※常勤役員等:法人の場合は常勤の役員(取締役、理事など)、
個人の場合は個人事業主自身又は支配人をいいます。以下同じ。
(a1)建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する
【ポイント】
これまでは、業種によって5年を超える経験を要求されることもありましたが、
今回、業種に関係なく一律5年になりました。分かりやすいですね。
(a2)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位で
5年以上経営業務を管理した経験を有する(責任者でなくても)
※ 「準ずる地位」については、後で説明しています。
(a3)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位で
6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する
※ 経管の補助業務(従前ルールでの「補佐」業務)
☆(ロ)が新ルール☆
(ロ)常勤役員等のうち少なくとも1人が下記の(b1)(b2)のいずれかに該当し、
かつ、当該常勤役員等を直接に補佐する者として
次の(c1)(c2)および(c3)に該当する者をそれぞれ置くものであること。
【ポイント】
一定条件を満たす常勤役員 + 一定の条件を満たす直接補佐する担当スタッフ
ここで「直接」とは、「他の者を介在させず、その役員から直接指示を受ける」という意味
(b1)建設業の財務管理、労務管理、業務運営のいずれかの業務に関し、
建設業の役員等の経験2年以上を含む 5年以上の建設業の役員等
または役員等に次ぐ職制上の地位における経験を有する
【ポイント】
建設業務全般ではなく、一部の業務についての経験があれば良い。
(b2) 建設業の財務管理、労務管理、業務運営のいずれかの業務に関し、
建設業の役員等の経験2年以上を含む 5年以上の役員等の経験を有する
【ポイント】
建設業以外の業種に関する役員経験も考慮される。
(c1)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者
(c2)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者
(c3)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の業務運営の経験を有する者
※(c1)(c2)(c3)は1人が複数の経験を兼ねることが可能とのこと。
もっとも、1人で(c1)(c2)(c3)を兼ねる場合、
それぞれの経験5年ずつ合計15年分を証明しなければならない、というわけではないようです。
例)
補佐担当者になろうとするFさんが、A社で、2015年1月~2020年1月(丸5年間)まで
経理業務と社会保険関係業務を兼務していた場合
1)Fさんは、A社の建設業許可については、
財務管理と労務管理のいずれについても5年以上の経験を有する者の要件を満たせます。
2)FさんがN社に転職した場合、N社の建設業許可については、
財務管理と労務管理のいずれについても5年以上の経験を有する者の要件を満たせません。
【ポイント】
・いずれも自社で業務経験を積んだスタッフでなければなりません。
つまり、他の建設業者における管理業務の経験は、引き継げません。
(個人事業からの法人成りの場合については、具体的な対応が不明ですので、
申請窓口にご相談ください。)
・役員、部門長などの「役職」に就いていたことは要求されていない。
・「直接」指示を受ける体制であり、実態があれば良い。
これまでは経営管理責任者の基準を満たすことが難しかった企業でも、
人員配置などを工夫すれば、この新基準を満たせるかもしれません。
運用開始時期
改正後の新基準は、2020年10月1日に運用が始まりました。
なお、申請書類の様式も変更されています。
実際に手続をする際には、事前に窓口にご確認ください。(旧様式で手続ができる場合もあります。)
条文など
新基準に関する省令案
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155200311&Mode=0
建設業法第7条(抜粋)(改正前)
法人である場合においてはその役員
(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)のうち
常勤であるものの一人が、
個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が
次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し
五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
建設業許可事務ガイドライン
最終改正 平成29年11月10日国土建第276号 (抜粋)
「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、
業務を執行する社員、取締役、執行役
若しくは法人格のある各種の組合等の理事等、
個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等
営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、
経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいう。
国土建第117号 平成29年6月26日
経営業務管理責任者の大臣認定要件の明確化について(抜粋)
経営業務管理責任者要件として認められる経験のひとつとして
「経営業務の管理責任者に◆準ずる地位◆にあって
資金調達、技術者等配置、契約締結等の業務全般に従事した経験」(以下「補佐経験」という。)
が位置付けられているところ、
「経営業務の管理責任者に準ずる地位」について、
従前の「業務を執行する社員、取締役又は執行役に次ぐ職制上の地位にある者」等に加え、
「◆組合理事、支店長、営業所長又は支配人に次ぐ職制上の地位にある者◆」等も
認めることとする。
(国土交通省「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進
に関する法律の 一部を改正する法律案」を閣議決定
~建設業の将来の担い手を確保するため、建設業者及び発注者に係る制度を改正~ )
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000615.html
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司法書士 木崎正亮
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