所有者不明の土地を利用できるかもしれません。

2018/06/07
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「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が

国会で成立しました。

 

公布(公布の説明は、後記)から6か月以内に施行

されることになっているので、

2018年度中に運用が始まる予定です。

(公益的な事業で使用できる制度は、

1年以内に施行されることになっているので、

運用開始は、来年度になるようです。)

 

というわけで、この法律をざっと読んでみました。

 

(政令や施行規則などの詳細はこれからなので、大雑把な説明です。)

 

今後、国土交通省などのホームページに

詳細な情報が上がってくると思いますので、

この制度に興味をお持ちのかたは、

そちらをたまにチェックしてみてください。

 

 

【公益的な事業をするために、所有者不明土地を使用できる制度】

 

この制度をかいつまんで説明すると、

 

(1)その土地が、調べても所有者が不明で、

建物が建ってなくて、使用もされていない状態あり、

 

(2)その土地で一定の公益的な事業

(法律で具体的に列挙されています。後記参照。)

を実施しようとする人(法人を含む。)が

 

(3)都道府県知事宛に使用許可(法律上は「裁定」という言葉。)を

申請(実際の窓口は、まだ不明)し、

 

(4)申請を受け付けた役所は、

申請書類(添付書類を含む)の審査をして、

 

(5)審査要件を満たしていれば、

申請内容等の情報を公告し、6か月間縦覧して、

(縦覧期間内に所有者から所有者である旨の申し出があると却下事由に該当)

 

(6)その縦覧期間を経て、却下事由が一つもなければ、

10年以内の期限を定めて使用許可をする、

 

という感じです。

 

(申請書の記載事項)

使用許可(裁定)を求める申請書に記載すべき事項は、

次のようになっています。(法第10条)

 

 一 事業者の氏名又は名称及び住所

 二 事業の種別

 三 事業区域

 四 裁定申請をする理由

 五 土地使用権の目的となる特定所有者不明土地の所在、地番、地目及び地積

 六 特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情

 七 土地使用権等の始期

 八 土地等使用権の存続期間

 

(審査事項)

 

主に審査される事項は、次のような点です。

 

・所有者が本当に不明なのか、十分な調査がされているか。

・営もうとする公益的な事業が法律に列挙されている事業に該当するか。

・その事業に関する資金計画が十分か。

・所有者が判明した際に所有者が受ける損失に関する補償金を準備できるか。

 

(申請の手数料)

 

「損失の補償金の見積額に応じ政令で定める額を徴収することを標準として

条例を定めなければならない。」

となっていますので、金額は未定ですが、

一定の申請手数料を納付することになります。

 

(補償金の供託)

 

使用許可後は、補償金の供託(場所は、法務局)が必要です。

事業開始日までに供託をしないと、使用許可は失効します。

 

(終了時の原状回復)

 

使用期限が満了したときには、

土地を原状回復して返還することになります。

 

(使用期限の延長)

 

使用期限満了時にも、

所有者が判明しておらず、事業の継続を希望する場合は、

使用期限の延長の手続きをすることができます。

 

 

【まとめ】

 

使用許可の申請準備

(所有者不明であることの調査で、

それなりの時間がかかると思う。1か月~数ヶ月)

使用許可の申請(受付)

審査

公告・縦覧(6か月)

使用許可(裁定)

供託

公的的な事業での使用開始

 

★申請の準備から実際に使用できるようになるまでには、

1年くらいかかりそうですね。

制度の運用開始が2019年度だと、

実際に使用できるようになるのは、2020年度以降とかになるかも。

 

 

【その他】

 

【知事による相続財産管理人の選任請求】

 

所有者不明土地について、県知事は、家庭裁判所に対して、

民法で定める相続財産管理人の選任を請求できるようになります。

(民法では、利害関係人と検察官しか請求できません。)

(司法書士の出番が増えるかも??)

 

【公益的な事業を考えている人への情報提供】

 

公益的な事業を実施しようとする人から

土地所有者等を知る必要があるとして

土地所有者等関連情報の提供の求めがあったときは、

その土地所有者等の探索に必要な限度で、

その公益的な事業を実施しようとする人に対し、

土地所有者等関連情報を提供できるようになります。

 

 

【所有者不明土地の旨の登記】

 

公益的な事業を実施しようとする人から求めがあったときには、

登記官(法務局)は、登記簿上の所有者が死亡した時から

10年以上相続登記がされていない土地について、

所有権の登記名義人となり得る者を探索した上、

職権で、「所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり

相続登記等がされていない土地である旨」などを

登記簿に記載することができるようになります。

(調査の一部を司法書士に嘱託(外注)するとかになるかも?)

 

(法律の公布について)

法律は、法律の成立後、後議院の議長から内閣を経由して奏上された日から30日以内に公布されなければなりません。
法律の公布に当たっては、公布のための閣議決定を経た上、官報に掲載されることによって行われます。(内閣法制局ホームページから引用)

 

(公益的な事業:地域福利増進事業)

3 この法律において「地域福利増進事業」とは、次に掲げる事業であって、地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進を図るために行われるものをいう。

 一 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路、駐車場法(昭和三十二年法律第百六号)による路外駐車場その他一般交通の用に供する施設の整備に関する事業

 二 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による学校又はこれに準ずるその他の教育のための施設の整備に関する事業

 三 社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)による公民館(同法第四十二条に規定する公民館に類似する施設を含む。)又は図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館(同法第二十九条に規定する図書館と同種の施設を含む。)の整備に関する事業

 四 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)による社会福祉事業の用に供する施設の整備に関する事業

 五 病院、療養所、診療所又は助産所の整備に関する事業

 六 公園、緑地、広場又は運動場の整備に関する事業

 七 住宅(被災者の居住の用に供するものに限る。)の整備に関する事業であって、災害(発生した日から起算して三年を経過していないものに限る。次号イにおいて同じ。)に際し災害救助法(昭和二十二年法律第百十八号)が適用された同法第二条に規定する市町村の区域内において行われるもの

 八 購買施設、教養文化施設その他の施設で地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業であって、次に掲げる区域内において行われるもの

  イ 災害に際し災害救助法が適用された同法第二条に規定する市町村の区域

  ロ その周辺の地域において当該施設と同種の施設が著しく不足している区域

 九 前各号に掲げる事業のほか、土地収用法第三条各号に掲げるもののうち地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業

 十 前各号に掲げる事業のために欠くことができない通路、材料置場その他の施設の整備に関する事業

 

法律の条文は、こちら(衆議院ホームページ)

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19605052.htm

 

 

 

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司法書士・行政書士 木崎正亮

 

~相続と中小企業の法務ドクター~

 博多駅の司法書士・行政書士 だいふく法務事務所

 

注:一般のかたにとって解りやすい説明を心がけています。

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