遺言書の作成の手順。何から始める? 司法書士が解説します!

2018/04/12
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最終更新 2020/04/08

 

「遺言を作るぞ!」と決めたけど、
実際にどういったことをすべきなのかイマイチ分からない

というかたもいらっしゃると思います。

 

遺言は、法律上の意味を持つ文書。

単なる手紙のように思いつくままに書けば良いというものではありません。

遺言を作るときは、次の手順を参考にしてみてください。

 

 まずは事実関係の確認!

まずは事実関係をきちんと把握しなければなりません。(←とっても重要です。)

 

把握すべき主な事実関係
  • 相続財産(資産・負債)
  • 相続人予定者(推定相続人)
  • 紛争の火だね(要因)

事実関係の把握を大きく誤ると、遺言を作る意味が薄れたり、
意味がなくなったりすることがあります。

 

「事実関係の把握なんて、自分のことなんだから、間違うわけがない」

とお思いのかたは、特にご注意!

事実関係の把握には、現在の事実だけでは足りません。

  • 現在の事実
  • 過去の事実
  • 将来の予測事実

さらに、その事実にどういった法的な意味があるのかを考えることまで含まれます。

 

誤っているおそれのある認識の例
  • 「娘は、すでに結婚して嫁に行ったから、遺産をもらう権利がない」
  • 「遺産を渡したくない子どもがいれば、他の子どもに遺産を全部贈与すればよい」
  • 「子どもが若い頃に借金をして、それを代わりに払ってやった。
    その子どもには、遺産を残してやる必要はない」
  • 「遺産が自宅の土地建物だけだから、遺言は必要ない」

  

相続財産をキチンと把握

相続が発生した時点の財産が相続財産になります。

財産には、借金などの負債を含みます。

 

その人がいつ死亡するのか、その時期は誰にもわかりません。

場合によっては、現状から将来の死亡の時期を予想してシミュレーションをします。

 

資産も負債もほとんどない場合

 資産も負債もほとんどなくて、それが今後も継続する見込みであれば、

遺言を残す必要性は乏しいかもしれませんね。

 

ある程度の資産や負債がある場合

 資産や負債がある場合は、以下のことを考えます。

  • 不動産

相続財産に「不動産」があれば、不動産の権利証や登記簿謄本などで確認します。

 不動産は、道路の持分が漏れたりすることがありますので、市区町村役場で調査したりします。

  • 預貯金

預貯金は、通帳で確認します。

ご自分で全ての口座を把握できていないことも珍しくありませんので、
銀行に照会したほうが安全です。
(若い頃に通帳を作ったが、使わなくなって、そのまま忘れていることも。)

  • 株式や投資信託などの有価証券

過去に取引があった証券会社なども含めて、照会したほうが安全です。

  • 保険

生命保険、医療保険、損害保険、火災保険などの各種保険も、
解約返戻金や死亡時の保険金などを確認しておきましょう。

 

※ 死亡保険金について

死亡保険金は、通常、相続財産に含まれません。

しかし、特別受益(とくべつじゅえき)として相続財産の計算に参入されることがありますので、
把握しておく必要があります。

 また、相続財産に含まれない特性を活かして、相続対策で利用することができます。

相続税の対策になることもありますので、保険の見直しも検討してみましょう。

  

相続人予定者の把握

子どもの確認 

相続人予定者(推定相続人)は、戸籍で確認します。

 相続人予定者を確認するための戸籍は、

  • 遺言者が生まれた時から現在までの一連の戸籍です。(原則)
  • 子どもの戸籍

子どもの有無を確認するためです。

 子どもの有無などの状況は、通常、ご自身で把握しているでしょうから、
特に疎遠で生死すら把握できていないような場合を除き、
戸籍を取得して確認することまではしなくて良いでしょう。

子孫がいない場合

子ども(孫を含む)がいない場合は、父母、祖父母の戸籍を確認することがあります。

養父母も含まれます。

(年齢などによりどこまで必要なのかが変わります。)

子孫も先祖もいない場合

 子ども、父母・祖父母がいない場合は、兄弟姉妹の戸籍を確認することがあります。

兄弟姉妹には、遺留分という権利がありませんので、
通常は、相続財産を渡したい相続人予定者の戸籍を確認すれば十分でしょう。

 

※遺留分とは、相続人(兄弟姉妹とその子どもを除く)が最低限相続できる財産のことをいいます。

遺留分を侵害する内容の遺言や贈与などがあった場合は、
遺留分の権利を侵害された相続人から
「遺留分侵害額請求」(侵害分の金銭支払いを請求)
を受けるおそれがあります。

  

紛争の火だねの把握

 相続の際に問題になりそうな火だね(要因)を考えます。

  • 遺産が自宅不動産しかない
  • 生前に贈与した
  • 子ども間に収入などの格差がある
  • 介護の負担が一部に偏っている
  • 相続税の課税の有無の予測
  • 自身の生活費
  • 事業をしている
  • 隠し子がいる
  • 障がいを持つ子どもがいる
  • 離婚歴などがあり、血筋が異なる子どもがいる
    (離婚したら前妻には相続権がなくなりますが、子どもの相続権はなくなりません。
    親権や監護権の有無は関係ありません。)
  • 縁の切れている子どもがいて、遺産を渡したくない
    (子どもは、結婚すると親の戸籍から出て行きますが、
    親子の縁が切れるわけではありません。勘当制度はありません。)
  • 処分が難しい田舎の不動産がある
  • 借金がある
  • お墓の継承
  • 犬猫などのペットの生活
  • などなど

こういった要因は、
エンディングノートを使うと整理しやすいかもしれません。

  

実際に遺言を作る

 現状(事実関係)を基にして、どういう遺言を作るのか考えます。

 完璧にしようとすると、多くの時間と手間がかかるかもしれません。

「無理せずにできる範囲で、できることをする」
というくらいの気持ちで取り組むほうが良いと思いますよ。

 考えがある程度まで整理できたら、遺言書を作りましょう。

 

※ ここで色んなことを考えすぎて、考えるのが面倒になり、

結局、遺言を作らなかったなんていう残念な結果にならないように気を付けてください!

 

専門家に依頼すると、
「面倒になって途中で作るのを止める」
ということは、かなり少なくなると思います。

 

自筆証書遺言を作る場合

民法で定められた作り方を確認して、自分で書きます。

基本的な条件は、次のとおりです。

  • すべての文章を自分で書く。(パソコンは不可)
    ただし、財産目録部分は、パソコンで作成したり、資料を付けたりできます。
  • 日付けを明確にする。(□年○月吉日は不可)
  • 署名と押印をする。(押印は必須。本名を書く)
  • あいまいな表現を避ける。(「自宅を譲る」など)

 

書き間違えた場合

書き間違えた場合は、訂正方法のルールが難しいので、
面倒でも最初から書き直すほうが良いかもしれません。

 専門家に助言・指導を受けることもできますので、相談してみましょう。

  

公正証書遺言を作る場合

  • 公証役場に連絡をして、事前相談
  • 公証役場に遺言書作成日を予約
  • 予約した日時に交渉役場に出頭
    必要書類と現金をもって窓口に行きます。

※予約していないと、公証人が出掛けていて不在のことも。

※予約時に、公正証書遺言の作成に必要な書類や費用などを案内してもらえます。

 

戸籍や資産などの資料・提出書類は、自分で集めなければなりません。

 

公正証書遺言を作る場合でも、
司法書士や弁護士などの専門家に相談・依頼して
進めるほうがスムーズです。

また、遺言以外の相続対策も含めた総合的な対策を助言してくれるでしょう。

※公証役場では、通常、公正証書の作成に関する相談にしか応じてくれません。

 

公正証書遺言を作る際に必要な資料

以下は、日本公証人連合会ホームページから引用

「遺言者本人の確認資料(原則として印鑑証明書と実印)のほか、以下の資料をお持ちください。

  1. 遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本
    相続人が甥、姪など、その本人の戸籍謄本だけでは遺言者との続柄が不明の場合は、その続柄の分かる戸籍謄本もお持ちください。
  2. 受遺者(遺言者の財産の遺贈を受ける者)の住民票
    遺言者の財産を相続人以外の者に遺贈する場合は、その受遺者の戸籍謄本ではなく住民票をお持ちください。なお、受遺者が法人の場合は、その法人の登記簿謄本をお持ちください(公に認知されている公益の団体の場合は、不要です。)。
  3. 固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
    遺言者の財産に不動産が含まれている場合にお持ちください。
  4. 不動産の登記簿謄本
    証書に所在・地番等不動産を特定する事項を記載するために必要です。特に、証書中で不動産の特定をしない場合は、不要です。
  5. 証人の確認資料
    遺言公正証書作成の場合、その場に立ち会う証人2人が必要ですので、その方について、住所、職業、氏名、生年月日のわかる資料をお持ちください。
    この証人については、誰でもなれるものではなく、推定相続人、受遺者とそれぞれの配偶者、直系血族等の利害関係人や未成年者等は証人になれません。適当な証人がいないときは、公証役場で証人を手配することもできますので、公証役場にご相談ください。
  6. 遺言執行者の特定資料
    遺言執行者とは、遺言の内容を実現する者であり、遺言書に原則として記載する必要があります。通常相続人又は受遺者が遺言執行者になりますのでその特定資料は不要ですが、それ以外の方を遺言執行者とする場合は、その方の住所、職業、氏名、生年月日が確認できる資料をお持ちください。」

 

(公証事務手数料) 

  1. 契約や法律行為に係る証書作成の手数料は、原則として、その目的価額により定められています(手数料令9条)。 目的価額というのは、その行為によって得られる一方の利益、相手からみれば、その行為により負担する不利益ないし義務を金銭で評価したものです。目的価額は、公証人が証書の作成に着手した時を基準として算定します。
    【法律行為に係る証書作成の手数料】
目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に5000万円までごとに1万3000円を加算
3億円を超え10億円以下 9万5000円に5000万円までごとに1万1000円を加算
10億円を超える場合 24万9000円に5000万円までごとに8000円を加算
  1. 贈与契約のように、当事者の一方だけが義務を負う場合は、その価額が目的価額になりますが、交換契約のように、双方が義務を負う場合は、双方が負担する価額の合計額が目的価額となります。
  2. 数個の法律行為が1通の証書に記載されている場合には、それぞれの法律行為ごとに、別々に手数料を計算し、その合計額がその証書の手数料になります。法律行為に主従の関係があるとき、例えば、金銭の貸借契約とその保証契約が同一証書に記載されるときは、従たる法律行為である保証契約は、計算の対象には含まれません(手数料令23条)。
  3. 任意後見契約のように、目的価額を算定することができないときは、例外的な場合を除いて、500万円とみなされます(手数料令16条)。
  4. 証書の枚数による手数料の加算 法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます(手数料令25条)。

 

遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。遺言は、相続人・受遺者ごとに別個の法律行為になります。数人に対する贈与契約が1通の公正証書に記載された場合と同じ扱いです。したがって、各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。
例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、3①の方式により、4万3000円です(なお、下記のように遺言加算があります。)が、妻に6000万円、長男に4000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は4万3000円、長男の手数料は2万9000円となり、その合計額は7万2000円となります。ただし、手数料令19条は、遺言加算という特別の手数料を定めており、1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円までの場合は、1万1000円を加算すると規定しているので、7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。次に祭祀の主宰者の指定は、相続又は遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は1万1000円です。 遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加えます。この他に、旅費(実費)、日当(1日2万円、4時間まで1万円)が必要になります。作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。

 

日本公証人連合会ホームページ http://www.koshonin.gr.jp/

 

 

 

司法書士・行政書士 木崎正亮

~相続と中小企業の法務ドクター~

博多駅の司法書士・行政書士 だいふく法務事務所

 

注:一般のかたにとって解りやすい説明を心がけています。

専門用語や細かい言い回しを極力避けているため、

必ずしも正確とはいえない表現が含まれていることがあります。

本サイトに掲載している情報のご利用は、

自己責任でお願いいたします。

 

(I write English translation experimentally.

I do not guarantee accuracy of translation.)

 

Shiho-shoshi and Gyosei-shoshi MASAAKI KIZAKI

Daifuku Lawyer Office (Shiho-shoshi and Gyosei-shoshi) at Hakata Station

Address:2-24, Hiemachi, Hakata-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka-ken Japan.

Phone:092-432-3567

 

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