「相続放棄」の意味を間違っていると、面倒なことになることがあります。

2019/03/25
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相続放棄という言葉を聞いたことがありますか?

 

相続放棄という言葉を聞いて、

どのようなイメージが湧きますか?

 

『相続放棄』は、二つの意味で使われているようです。

 

(相続放棄の意味 その1)

 

一つ目は、

「法定相続分があるけど、自分は遺産を一切取得しない」という意味で、

「相続放棄」という言葉を使うことがあります。

 

法律的には、それぞれの遺産をそれぞれ誰が取得するのか

を決める「遺産分割」に該当します。

 

この意味で放棄をしても、その相続について

相続人の地位を失うわけではありません。

 

当社で相続の相談を受けた際に

この「相続放棄」をおっしゃるかたが

時々いらっしゃいます。

 

 

(相続放棄の意味 その2)

 

二つ目は、

家庭裁判所においてする『相続放棄』です。

 

民法という法律で定められている「相続放棄」です。

家庭裁判所に申述(届出みたいなものです。)をして、

適法なものとして受け付けられると、

その相続について「最初から相続人にならなかった」ことにできる制度です。

 

なお、

この相続放棄は、相続ごと(死亡した人ごと)に

手続をしなければなりません。

例えば、父親に発生した相続について相続放棄をしても、

母親に発生した相続については相続権があります。

 

「相続放棄」といえば、通常は、こちらの意味でしょう。

 

 

以上のとおり「相続放棄」という言葉は同じでも、

法律上の意味は、先に説明した『相続放棄』とまったく違うので、

勘違いのないように気を付けましょう。

 

 

(家庭裁判所で相続放棄の手続をするメリット)

 

なぜ、家庭裁判所で手続をする必要があるのでしょうか?

 

被相続人に資産(プラス)を明らかに超える

借金(負債)(マイナス)がある場合です。

 

遺産分割協議によって、

その借金を誰が引き継ぐのかを相続人同士で決定しても、

その債権者は、相続人の決定に拘束されません。

 

債権者は、法定相続分の割合の借金を相続していると主張して、

各相続人に対して取り立ての請求をすることができるのです。

 

このような事態を回避する方法が家庭裁判所における相続放棄です。

 

相続人が相続放棄の申述を家庭裁判所に適式にすれば、

対象の相続について「最初から相続人にならなかった」ことになるため、

債権者から金銭などの支払い請求を受けても、

法的に支払いを拒否できるのです。

 

もしも、遺産の中に借金があり、

その借金が資産を明らかに上回っている場合や

めぼしい資産がないことが明らかな場合は、

家庭裁判所における「相続放棄」を検討しましょう。

 

ちなみに、借金額と資産額が不明確の場合は、

「限定承認」という手続をすることがあります。

 

なお、借金が住宅ローンの場合は、借りる際に保険に入っていて、

死亡保険金などで返済できるケースも多いです。

 

 

(家庭裁判所での相続放棄の注意点)

 

相続放棄の手続をする際には、特に次の点に注意しましょう。

 

(1)申述期限

(2)法定単純承認

(3)次順位の法定相続人への配慮

 

 

(1)申述期限について

 

申述の期限は、

「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」です。

 

葬儀だ、各種行政手続きだ、法事だと慌ただしくしているうちに、

3か月くらいはすぐに経ってしまいますので、

借金が多そうということであれば、

四十九日を待たずに早めに専門家に相談しましょう。

 

(2)法定単純承認について

 

相続対象の資産を勝手に処分(売却や金銭の費消など)しまうと

「相続財産を処分」したことになり、

相続を承認したものとみなされて(法定単純承認)、

この相続放棄ができなくなることがあります。

 

(3)次順位の相続人予定者への配慮

 

第一順位である子どもの全員が家庭裁判所における相続放棄をすると、

第二順位である直系尊属(被相続人の直系の先祖)が法定相続人になります。

 

だから、第一順位である子どもの全員が相続放棄をする場合は、

第二順位の法定相続人も相続放棄することを検討することになります。

 

第二順位の法定相続人の全員が相続放棄をする場合は、

第三順位の兄弟姉妹(被相続人の兄弟姉妹)も相続放棄を

検討することになります。

 

相続放棄することを次順位以降の相続人予定者に連絡せずにすると、

突然、債権者から借金返済の請求を受けたりして

トラブルになることがありますので、気を付けましょう。

 

相続放棄の申述書は、こんな感じです。

(裁判所ホームページから引用)

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

木崎正亮

 

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司法書士・行政書士 木崎正亮

~相続と中小企業の法務ドクター~

 博多駅の司法書士・行政書士 だいふく法務事務所

 

注:一般のかたにとって解りやすい説明を心がけています。専門用語や細かい言い回しを極力避けているため、必ずしも正確とはいえない表現が含まれていることがあります。本サイトに掲載している情報のご利用は、自己責任でお願いいたします。

 

(I write English translation experimentally. I do not guarantee accuracy of translation.)

 

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